親知らずはでてきたら何が何でも抜かなくてはいけないわけではありません。
親知らずを残しておくことで、将来入れ歯やブリッジの土台として使ったり、どこかの歯がだめになったときに親知らずを移植することもあります。
また、欧米人のようにお口が大きくて、上下の親知らずがまっすぐはえていてかみ合っている場合は全く抜く必要がありません。しかし、実際のところ日本人の口の大きさから考えると、定員5人の車に6人で無理やり乗っているかのごとく、無理やり生えてきている親知らずがほとんどです。
ですので、基本的には中程度以上の虫歯ができたり、周囲の歯肉が腫れていたくなったり、現在問題はなくても周りの歯に悪影響を及ぼしそうな場合は抜いたほうがいいです。
よく痛くなったら抜けばいいのか?というご質問を受けますが、痛くなったときは親知らずだけでなく、その周りの歯も一緒に抜かなくてはいけない状況になっていることがあり、また抜くのも歯がぼろぼろになってしまうと、非常に困難になります。
そういったことを考えると、虫歯になる前でも予防的に抜くこともあります。
歯科医師と相談の上、 親知らずを残しておいた場合の利点と欠点を比較し、抜歯の必要性をしっかり検討することが重要です。
上の親知らずは比較的まっすぐはえてくることが多いです。上の奥歯は頬の筋肉が歯の側面に近接しているため、非常に歯ブラシを当てるのが難しく、虫歯になることが多い場所です。
抜くことは比較的容易なことが多く、痛みや腫れも少ないことが多いです。しかし、上の場合でも虫歯が大きくなってから抜こうとすると、つかんだり引っ掛けにくくなり、抜くことが難しくなることもあります。
下の親知らずは上の親知らずに比べると、まっすぐ生えてくることが少ないです。 上に比べて、唾液の浄化作用が届くため比較的虫歯になりにくいですが、歯肉がはれて痛みを出すことが多いです。 根の大きさや形態、そして顎の骨がかたいため上の親知らずに比べると抜くことが大変です。また周りの歯肉が厚いため、まっすぐ生えていても歯肉の切開が必要なこともあります。
親知らずの中で最もたちが悪いタイプになります。横に向いてうまっているため、歯ブラシはもちろんうがいで流すことも出来ないため、手前の歯との間に細菌がたまってしまいます。そこから感染して、親知らずだけでなくその手前の歯まで、虫歯になったり、歯肉が膿んだりすることがあります。
抜歯の手順としては、歯肉を切開して開き、顎の骨を削り、歯を割って小さくしてとりだします。抜歯後は縫う必要があります。抜くと言うより摘出といった方がいいかもしれません。
それなりの口腔外科に対する知識、経験がないと難しい手術です。
痛みは非常に主観的なもので、同じ処置をしても人それぞれで大きくかわってきます。 たとえば簡単な上の親知らずの抜歯ですと、通常痛み止めは1日くらいですむのですが、1週間ずっと痛みつづけることも5%くらいの方でおこります。 また腫れに関しても、親知らずの位置や患者様の体質によって大きく左右されます。 あくまで目安のにしかなりませんが、平均的には次のようになります。
タイプ | 痛み | 腫れ |
---|---|---|
上のまっすぐ生えているタイプ | 1〜3日 | ほとんど腫れない |
下のまっすぐ生えているタイプ | 5〜7日 | 3割くらいの確率で腫れる |
下の横に生えているタイプ | 10日〜14日 | 7割の確率で5日ほど腫れる |
上の親知らずの根っこは、上顎洞と呼ばれる鼻から繋がる副鼻腔に近接していることがあり、歯を抜いた後に、副鼻腔と口腔内が繋がってしまうことがあります。ほとんどのケースで自然に治癒してふさがりますが、ごくまれに穴がふさがらず、口の中の黴菌が上顎洞に感染し、上顎洞炎(蓄膿症に似た症状)になる場合があります。その場合は耳鼻科をご紹介させていただき専門的な治療が必要になることがあります。
下顎には太い血管と神経が走る管が通っています。親知らずの根っこがここに近接していることが多く、歯を抜く際に神経を圧迫してしまうことにより、術後に神経麻痺が起きることがあります。神経麻痺が起きた場合でも、ほとんどのケースが回復してきますが、長期的にマヒが残ってしまったという報告もあります。 当医院では通常のレントゲンだけではなく、上顎洞や神経管など、解剖学的な危険性がある場合には、CTを撮影して、術前に診査しております。通常のパノラマレントゲンは、正面からのみ映したレントゲンですが、CTは患部を360度、あらゆる視点から精査できますので、術前に精密な検査をした上で抜歯が可能かの判断をすることができます。 精査した結果、非常にリスクが高いと判断させていただいた場合は、大学病院や専門機関を紹介させていただきます。
よく右の親知らずを抜いたら、左右でバランスが崩れるから左の親知らずも抜かなく
てはいけないでしょうか?と質問されますが、全くそんなことはありません。
同様に上の親知らずを抜いたからといって、すぐに下の親知らずを抜く必要もありません。
昔は、こういったことが本や一部の歯科医の間で言われていましたが、現在多くの論文やレポートで、親知らずのせいで他の歯並びがかわることはないと報告されています。
親知らずの抜歯は、完全に保険の範囲内でおこなえます。費用は抜歯の難易度によって大きくかわります。
通常の抜歯であれば、お薬代を含んで1000円〜2000円ですが、横に向いて埋まっている親知らずだと5000円近くなります。
行っております。ただし、移植する親知らずと移植される側の歯根の形態や状態などの条件によって可能かどうかが決まります。費用も基本的には保険外診療となりますので、詳しくはご相談ください。
全体の98%は抜歯しますが、以下の場合のみ大学病院等の専門機関にご紹介させていただいております
(1)心臓病や重度の糖尿病などの全身的なリスクが非常に高い方(通常の高血圧などは問題ありません)
(2)極度の歯科恐怖症で、抜歯時に全身麻酔が必要な方
(3)親知らずを抜歯する際、神経や血管を損傷する可能性が非常に高い場合