「安いインプラント」で本当に大丈夫?
2026年10月1日
「インプラントって高いんですよね?」
患者さんから、よくこのような質問をいただきます。
実際、インターネットで検索すると、
「格安インプラント」
「インプラント1本○万円~」
といった広告を目にすることがあります。もちろん、治療費は患者さんにとって非常に重要な問題です。できるだけ費用を抑えて治療したい、という気持ちは当然だと思います。
しかし、インプラント治療を考えるときに、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
それは、「インプラントは、今払う金額だけでなく、10年後、20年後まで考えて選ぶ必要がある」ということです。
実は、世界には100を超えるインプラントメーカーが存在するといわれています。日本国内でも、さまざまなメーカーのインプラントが使用されています。
メーカーによって、
・インプラントの形状
・表面性状
・接続部分の構造
・使用できるパーツ
・価格
・これまでの臨床実績
などが異なります。
つまり、「インプラントなら、どのメーカーでも同じ」ではありません。
北上尾歯科が監修するインプラント情報サイトでも、インプラントメーカーによる違いや長期的な生存率について詳しく紹介しています。
最近では、中国や韓国などのメーカーを含め、比較的安価なインプラントも数多く流通しています。
もちろん、「中国製・韓国製だから悪い」という単純な話ではありません。
韓国製のインプラントにも多くの臨床実績を持つ製品がありますし、メーカーの国籍だけで良し悪しを判断するべきではありません。
重要なのは、「そのインプラントについて、どれだけ長期間の臨床データがあるのか?」ということです。
インプラントは、数か月や数年使って終わる治療ではありません。一度埋め込めば、10年、20年、それ以上にわたって使う可能性があります。
だからこそ、長期間にわたる臨床データが蓄積されているかという視点が非常に重要になります。
インプラントそのものは、非常に長期間機能することが期待できる治療です。
実際、10年以上の長期的な研究をまとめたレビューでは、インプラントの10年生存率は約93~96%という結果が報告されています。
さらに2026年に発表された20年以上の前向き研究を対象としたメタ解析では、20年時点のインプラント生存率は93.0%と報告されています。
つまり、「インプラントは長く使うことを前提に考える治療」なのです。
だからこそ、メーカー選びも「今の価格」だけではなく、10年後、20年後に安心して使える可能性があるかという視点で考えることが大切です。
中には「もしダメになって抜けたら、また新しいものを入れればいいですよね?」と考える方もいらっしゃいます。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
インプラントが抜ける原因には、インプラント周囲炎による骨吸収や、インプラントの破折、強い負荷などさまざまなものがあります。
特に、インプラント周囲の骨が大きく失われている場合には、単純に新しいインプラントを入れることができないケースがあります。
インプラントを撤去した後、十分な骨が残っていなければ、骨造成(GBRなど)を行ってから、改めてインプラントを埋入する必要が出てくることもあります。また、過去にインプラントが失敗した部位への再埋入は、最初の埋入よりも条件が難しくなることがあります。実際、過去に失敗した部位への再埋入について、初回埋入よりも生存率が低かったとする研究もあります。
つまり、抜けたら、もう一度入れればいいとは必ずしも言えないのです。インプラントの撤去が必要になるケースでは、実際に大きな骨欠損が生じることがあり、その後の再治療では骨の状態を評価したうえで、骨造成などを検討する必要があります。
最初の治療では問題なくインプラントを埋入できたとしても、一度失敗してしまうと、「同じ場所に、同じ条件で、もう一度」とはいかない可能性があるのです。だからこそ最初の1本が重要なのです。
インプラントは、何度も交換することを前提にする治療ではありません。
できるだけ長期間、安定して使用できるように、
・適切な診断
・適切な埋入位置
・十分な骨量
・適切な噛み合わせ
・日々のメインテナンス
・信頼性のあるインプラントシステム
などを総合的に考えることが重要です。
その中でも、患者さん自身が選択できる大きなポイントの一つが、「どのメーカーのインプラントを使用するのか」です。
現在、世界的に広く使用されているメーカーには、
・ストローマン
・ノーベルバイオケア
・アストラテック
などがあります。
これらは長い歴史を持ち、世界中で使用されてきたインプラントメーカーです。
北上尾歯科のインプラント情報サイトでも、この3社について、歴史や臨床実績、長期的な生存率について紹介しています。
もちろん、大手メーカーなら絶対に失敗しないという意味ではありません。
インプラントの成功には、メーカーだけではなく、患者さんの骨の状態、噛み合わせ、清掃状態、喫煙など、さまざまな要因が関係します。
しかし、長い歴史があり、世界中で使用され、多くの長期データが蓄積されているメーカーを選ぶことには大きな意味があります。
「安い=得」とは限らない
例えば、10万円安いインプラントを選んだとしても、数年後にトラブルが起き、
・インプラントの撤去
・骨造成
・再埋入
・新しい被せ物
・追加の治療期間
・通院回数の増加
などが必要になれば、結果的に治療費が高くなってしまう可能性があります。
もちろん、すべての格安インプラントでトラブルが起こるわけではありません。
また、高額なインプラントだから必ず長持ちするわけでもありません。
だからこそ、「安いか、高いか」ではなく、その価格に何が含まれているのかを見ることが重要です。
インプラントは、洋服や家電のように、「安いものを買って、壊れたら買い替える」というものではありません。顎の骨の中に埋め込み、自分の身体の一部になる治療だからです。
だからこそ、治療費だけで比較するのではなく、「どこのメーカーなのか?」「どれくらいの歴史があるのか?」「長期的な臨床データはあるのか?」「10年後、20年後もメインテナンスできるのか?」「もし転院した場合でも対応できるのか?」といったことまで確認してみてください。
インプラント治療は、決して安い治療ではありません。
だからこそ、少しでも安いものを選びたいという気持ちは当然です。しかし、インプラントは一度入れたら終わりではありません。10年、20年と使い続けることを考えれば、最初に信頼性や長期的な実績を重視して選ぶことが、結果的に「安く済む」可能性もあります。
「今いくら安いか」ではなく、「20年後まで考えたら、どちらが自分にとって本当に安いのか」という視点でインプラントを選んでみてはいかがでしょうか。