プーケットで開催されたグローバルサミットに参加してきました
2026年11月1日
先日、プーケットで開催された、インプラント治療を中心に展開する世界の大手歯科医療グループのサミットに参加してきました。
今回のサミットには、アメリカやブラジルをはじめ、世界各国で大規模な歯科医療グループを運営する理事長やCEOが集まり、今後の歯科医療のあり方についてディスカッションが行われました。
私自身、これまで国内外のさまざまな歯科学会に参加してきましたが、今回のサミットは普段の学会とは大きく異なるものでした。
一般的な歯科学会では、インプラントの治療技術や術式、材料、臨床研究などが中心となります。しかし、今回の主なテーマは、AIの活用、サイバーセキュリティ、組織づくり、人材育成、そして大規模な歯科医療グループの運営についてでした。
つまり、個々の歯科医師の技術を高めるという視点だけでなく、組織としていかに質の高い医療を安定的に提供していくかという、経営的な視点からの議論が中心でした。
日本では、医療法人の理事長は原則として医師または歯科医師が務める仕組みですが、海外では国によって制度が異なり、企業が歯科医院を運営することも可能です。
そのため、今回のサミットには歯科医師だけでなく、医療資格を持たない経営者や、組織運営を専門とする方々も多く参加していました。
特に印象的だったのは、海外の歯科医療グループの規模です。
アメリカやブラジルなどでは、すでに1,000医院を超える歯科医院を展開するグループが存在しています。こうしたグループでは、診療体制、スタッフ教育、患者管理、経営管理などが非常にシステマティックに構築されていました。
大規模化することで、教育体制や治療プロトコルを統一し、一定水準の医療を安定して提供しやすくなるというメリットがあります。また、設備投資や新しい技術の導入も、組織全体で効率的に進めることができます。
一方で、規模が大きければ必ず良い医療が提供できるわけではありません。特に歯科医療は、歯科医師個人の技術や経験に依存する部分が大きく、すべての医院で同じ治療レベルを維持することは簡単ではありません。
日本でも歯科医院の大規模化やグループ化は徐々に進んでいますが、海外と同じような形で発展するには課題があります。
その一つが、歯科医師の高齢化と若手歯科医師の確保です。
日本では開業医の高齢化や後継者不足が進んでおり、地域によっては勤務医の確保も難しくなっています。今後、大規模な歯科医療グループを形成しようとしても、実際に診療を担う歯科医師が不足していれば、医院数を増やすことはできません。
また、インプラント治療では、診断力、外科的技術、補綴設計、長期的な予後管理など、高い専門性が求められます。
組織として治療の標準化を進めながら、個々の歯科医師の技術レベルをどのように高めていくか。この両立が、今後の歯科医療グループにとって重要な課題になると感じました。
今回のサミットでも大きなテーマとなったのが、AIの活用です。
AIは今後、画像診断の補助、治療計画の立案、患者管理、スタッフ教育、業務効率化など、さまざまな場面で活用が進むと考えられます。
一方、医療のデジタル化が進むことで、患者情報を守るためのサイバーセキュリティも、ますます重要になります。
さらに、海外ではすでにロボット支援によるインプラント手術が行われています。
現在は歯科医師の判断や管理のもとで手術を支援する技術が中心ですが、今後さらに発展すれば、これまで歯科医師の経験や技術に依存していた治療の一部が、より高い精度で標準化される可能性があります。
こうした技術が一般的になるのも、決して遠い未来ではないのかもしれません。
今回のサミットに参加して改めて感じたのは、これからの歯科医療を考えるうえで、治療技術だけを学んでいればよい時代ではなくなっているということです。
AI、ロボット、デジタル化、組織運営、人材育成など、さまざまな要素が歯科医療の未来を大きく変えようとしています。
日本の歯科医療には優れた点が数多くありますが、海外の大規模グループの取り組みから学べることも非常に多いと感じました。
今後数年で、歯科医療を取り巻く環境は想像以上のスピードで変化していく可能性があります。
だからこそ、日本国内の情報だけでなく、世界で何が起きているのかを常に把握し、新しい技術や考え方を積極的に取り入れていくことが重要だと思います。
もちろん、海外の仕組みをそのまま日本に導入するのではなく、日本の医療制度や患者さんのニーズに合わせて発展させていく必要があります。
私自身、これからも臨床家として治療技術を磨き続けるとともに、組織を運営する立場として、世界の歯科医療の動向を学び続けたいと考えています。
今回のパリでのサミットは、これからの日本の歯科医療、そして私たちのグループが目指すべき方向性について、改めて考える非常に貴重な機会となりました。
今後も世界に目を向けながら、患者さんにより質の高い歯科医療を提供できる組織づくりに取り組んでいきたいと思います。
