エムドゲインによる骨の再生
2017年2月4日
「歯周病で失ってしまった顎の骨はもとには戻らない」これは歯科医師が患者さんに歯周病の説明をする際に、必ずお話する内容です。しかし実は歯周病で溶けてしまった骨を再生させる手術も存在します。その代表例であるエムドゲインを用いた骨再生療法を今回はご紹介します。
子供のころ、顎の骨の中で歯がつくられる際、エナメルマトリックスというタンパク質が歯の形成に重要な役割を果たしています。このタンパク質は歯だけでなく、歯を支える歯周組織の発達にも関わることがわかっています。エムドゲインはこのエナメルマトリックスを含んだゲルであり、歯周病で溶けてしまった骨の中に注入すると骨の再生がおこります。
このような骨再生手術があるにもかかわらず、なぜ歯科医師は「歯周病で失ってしまった顎の骨はもとには戻らない」というのでしょうか?
それはエムドゲインで骨を再生させるには、かなり細かな条件が必要とされるからです。
溶けてしまった骨の量、形態、歯肉の厚み、歯ブラシの仕方、喫煙の有無、糖尿病などの全身状態などなど。かなり厳しい条件のため、適応になる症例はそう多くはありません。
「グラグラになってしまった歯をどうしても抜きたくないから再生療法で治して欲しい!」こういう希望をもたれる患者さんは少なくありません。しかしながらグラグラになってしまった歯を、抜かずにしっかりと噛める状態にまで安定させるような治療法はありません。ですので、骨がとけてしまわないように歯周病を予防することが最も重要です。
なんとなくエムドゲインを否定しているような文章になってしまいましたが、そんなことはありません。適応症例を選べば、エムドゲインによって歯槽骨は再生しますし、歯周病が大幅に改善することもあります。。興味がある方はお気軽にご相談ください。
※写真は歯茎のなかにエムドゲインを注入している様子です。まず歯肉を切開し、歯石や膿んだ歯茎を取り除きます。その後、消毒・洗浄を行いエムドゲインを注入していきます。